アクトレス / 2006R18
都会の喧騒から離れたところの、田舎の小さな町。 その町の人里からはずれた田畑の真ん中に、 一軒のお店がぽつんと建っていました。
そのお店の名前は「駄菓子屋ひより」。
お店にいるのは、1人の冴えない若い店主と、1匹の飼い猫。 置いているのは名前の通り、駄菓子の数々。 特別珍しくもない、年季の入った駄菓子屋さんです。
ただ、注意深い人ならば気づくかもしれません。 店の入口に、1枚の張り紙がしてあることに。
店と同じぐらい年季の入った、 黄ばんだ紙に書かれているのはこんな言葉。
『魔法有リ□(マス)』
魔法——。
誰もが夢に見る不思議な言葉。 どんな夢も叶える不思議な力。 でも、現実には存在しない力。
普通ならば、こんな張り紙は冗談だと思うでしょう。
でも——この張り紙が冗談じゃなかったら?
この店には本当に、魔法を置いているとしたら?
夢や願いや悩みを魔法で解決することができるとしたら?
それはとても、とても素敵なことではないでしょうか?
そう思ったのは、私だけではないようです。
ほら、今、お店の前で足を止めた1人の少女。
この後、お店に入った彼女はきっと、こう言うのです。
「魔法、ひとつくださいな」
——って。